カワヨシノボリ or クロダハゼ類





カワヨシノボリ 胸鰭軟条数18以下
クロダハゼ類 胸鰭軟条数18以上

カワヨシノボリとクロダハゼ類(=トウヨシノボリ:後述)は、どちらも広域分布する身近な魚で、同所的に生息することもあり、 「写真掲示板」に投稿されることの多い種類です。 何ヨシノボリかという質問はたいていこの両種です。胸鰭軟条数で同定を試みますが、 その前に当サイト内での定義を記しました。

カワヨシノボリ
遺伝的な地域集団
形態的な表現型
カワヨシノボリ
├─── グループ5(富士川・天竜川水系等)
└┬── グループ4(安倍川水系)
  └┬─ グループ3(琵琶湖淀川水系以西)
    └┬ グループ2(伊勢湾流入河川・北陸)
      └ グループ1(琵琶湖淀川水系以西の日本海側)
カワヨシノボリ
 富士型
 赤石型
 斑紋型
 壱岐佐賀型
 無斑型
│├ 伊勢湾流入河川個体群
│└ 琵琶湖淀川水系以西個体群
 不明型
     天竜川個体群
     福井県個体群
     福江島個体群
カワヨシノボリは長野県北部・静岡県以西の本州・四国・九州に分布し、純淡水魚で主に上・中流域に生息します。 水流のやや強い場所に多く、静水の湖や都市部の池ではほぼ見られません。 遺伝的に5グループと、形態的に5+不明型5個体群(9集団)が知られています。 遺伝と形態は不一致する場合もあるため、現在のところ表現型で分ける意味は低いと判断し、 当サイトでは単に「カワヨシノボリ」として扱っています。

クロダハゼ類
1989年にトウヨシノボリと名付けられ、2013年まで使われた種の分類は、混迷を極めています。

■ トウヨシノボリの混迷 ■
↑小難しい詳細↑



トウヨシノボリ(1989年)−ビワヨシノボリ−ウシヨシノボリ(トウカイヨシノボリ)=クロダハゼ類
クロダハゼ類の"類"=シマヒレヨシノボリ+カズサヨシノボリ+オウミヨシノボリ+未掲載種類
トウヨシノボリ(1989年)は「日本産魚類検索 第三版」の中途半端な整理によって混迷しています。 そのため従来通りの「トウヨシノボリ」や「旧トウヨシノボリ」の表記は、いくつか問題点があるため、もう使わない方が良いと思われます。 「日本産魚類検索 第三版」のクロダハゼ、シマヒレヨシノボリ、カズサヨシノボリ、オウミヨシノボリ、未掲載種類は、 まとめてクロダハゼで良いと考えられますが、定説のない混迷に配慮し、 的確さと曖昧さの両方を持ち合わせる、「クロダハゼ類」という表記で当サイトでは扱っています。

胸鰭軟条数
分布日本産ヨシノボリ属141516171819202122




カワヨシノボリ
クロダハゼ類(シマヒレヨシノボリ型)
(クロダハゼ型)
(カズサヨシノボリ型)
(オウミヨシノボリ型)
(不明型)
ビワヨシノボリ
ウシヨシノボリ(トウカイヨシノボリ)
ルリヨシノボリ
オオヨシノボリ
シマヨシノボリ(九州以北集団)
クロヨシノボリ(屋久島以北集団)
ゴクラクハゼ









アオバラヨシノボリ(太平洋側集団)
アオバラヨシノボリ(東シナ海側集団)
オガサワラヨシノボリ
キバラヨシノボリ(奄美集団)
キバラヨシノボリ(沖縄島集団)
キバラヨシノボリ(八重山集団)
アヤヨシノボリ
ヒラヨシノボリ
シマヨシノボリ(琉球列島集団)
クロヨシノボリ(琉球列島集団)
カワヨシノボリ14〜18本  クロダハゼ類18〜22
序論が長くなりましたが、カワヨシノボリとクロダハゼ類は、基本的には胸鰭軟条数を数えるだけで判別できます。 上表の一部はひらっちさんに情報を頂き、私の判断で作成しました(感謝)。 屋久島以北で胸鰭軟条数14〜17本であればカワヨシノボリでほぼ間違いありません。 胸鰭軟条数は根元を数えます。枝分かれているものは無視して下さい。 19本を越した時点でカワヨシノボリではないと判断できます。

18本はグレーゾーン
胸鰭軟条数18本の場合は、多くの傾向的な特徴を参考に、総合的に判断する必要があります。

ヨシノボリ属をより詳しく調べる場合は容易ではありません。 14種14集団・型(23種類)は雌雄差が大きく、単純に46パターンの表現型があり、 更に成育段階・婚姻色・環境要因・個体差・地域差・交雑などの影響が例外を生み、多様な表現型を把握していないと同定は出来ません。 屋久島以北に分布する種類も、放流で全国的に散らばり、加えて国外産のヨシノボリ属が観賞魚店などで入手可能で、 日本に放流されている可能性も否定できません。 同定が難しいから「ヨシノボリ」とするのは、 河川湖沼の環境悪化で絶えた種類や放流で新顔が入っても、その地域に本来どんなヨシノボリ属がいたかを知ることは出来ません。 そうなる前に彼らのことを、もっと知ろうとする必要はあるかもしれません。


参考・引用文献 ※不備がある場合は改めますのでお手数ですがご連絡ください。
□ 日本産魚類検索 全種の同定 第二版 中坊徹次編 東海大学出版会 2000.12.20
□ 日本産魚類検索 全種の同定 第三版 中坊徹次編 東海大学出版会 2013.2.26
□ 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚 改定版 川那部浩哉・水野信彦・細谷和海編 監修 山と渓谷社 2001.8.25
□ 淡水魚 7号 財団法人淡水魚保護協会 1981.9.25
質問掲示板 過去記事 トウヨシノボリ池沼型という呼称について
□ 日本生物地理学会会報 Vol.60 日本生物地理学会 2005.12.20
□ Oijen et al. (2011) On the Earliest Published Species of Rhinogobius. With a Redescription of Gobius brunneus Temminck and Schlegel, 1845. Journal of the National Taiwan Museum, 64(1): 1-17.
□ Suzuki et al. (2011) A new species of Rhinogobius Gill, 1859 (Teleostei: Gobiidae) from the Bonin Islands, Japan. Journal of Marine Science and Technology, 19(6): 693-701.
□ Ichthyol Research (2002) 49: 333-339
□ 魚類学雑誌 (1993) 39(4): 329-343
□ 決定版 日本のハゼ 瀬能宏/監修 鈴木寿之・渋川浩一・矢野維幾/著者 平凡社 2004.9.24
□ 鈴木寿之・向井貴彦・吉郷英範・大迫尚晴・鄭達壽 (2010) トウヨシノボリ縞鰭型の再定義と新標準和名の提唱 大阪市立自然史博物館研究報告 第64号, pp.1-14.
□ 鈴木寿之・陳義雄 (2011) 田中茂穂博士により記載されたヨシノボリ属3種 大阪市立自然史博物館研究報告 第65号, pp.9-24.
□ 吉郷英範 (2011) 分布域東限に生息するカワヨシノボリ(硬骨魚類網:スズキ目ハゼ科). 比和科学博物館研究報告, 52: 339-358, pl. 5
□ 日本産ヨシノボリ類におけるミトコンドリアDNAの遺伝子浸透 向井貴彦・鈴木寿之・西田睦 日本魚類学会(講演要旨) 2003.10
□ ビワヨシノボリの古い話 高橋さち子 平成23年度ゴリ研究会(講演要旨) 2011.5
□ 向井貴彦・高橋 洋 2010. 種間交雑を伴う系統地理 渡辺勝敏・高橋洋. 編著, 淡水魚類地理の自然史.北海道大学出版会, p. 137-152.
□ Masuda, Y., T. Ozawa & S. Enami (1989) Genetic differentiation among eight color types of the freshwater goby, Rhinogobius brunneus, from western Japan. Japan. J. Ichtiol., 36(1): 30-41.
□ 鈴木寿之・陳義雄(2011)田中茂穂博士により記載されたヨシノボリ属3種.大阪市立自然史博物館研究報告 65号, 9-24.
□ 平成27年度ゴリ研究会講演要旨集 2015.7.11
□ Suzuki, T., Shibukawa, K., Aizawa, M. (2017) Rhinogobius mizunoi, A New Species of Freshwater Goby (Teleostei: Gobiidae) from Japan. Bulletin of The Kanagawa Prefectural Museum Natural Science, 46: 79-95.
□ Takahashi, S., Okazaki, T. (2017) Rhinogobius biwaensis, a new gobiid fish of the "yoshinobori" species complex, Rhinogobius spp., endemic to Lake Biwa, Japan. Ichthyological Research: DOI 10.1007/s10228-017-0577-4