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滋賀県で採集したオグラヌマガイです。
先日maikyさんと一緒に採集しました。自賛したいほどですが、伝わらないね(笑)。
尊敬する某先生に確認を取ったところ「貝屋的には凄いネタです。すばらしい!
オグラを泳いでとった人は私は知りません。いただけるなら是非欲しいです。」
5個体を送って、喜んで頂きました。そんな貝なんですけど、分からないですよね…。

オグラヌマガイ Oguranodonta ogurae は、オグラヌマガイ属という1属1種で、
琵琶湖淀川水系の固有種(固有属)です。詳細はここに記されているため割愛します。
我々が採集した場所は、琵琶湖から遠く離れた、移入も疑われる、溜池とかではなく、
琵琶湖と繋がる水域です。これまで本種の生息報告が無く、発見だと思っています。
本来であれば報文を書くべきですが、淡水二枚貝類は採集圧が割りと高いそうで、
生息地公開による問題を避けるため、必要に応じて対応をすることに決めました。

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同所的に見られた二枚貝は、写真の左上2個体がヌマガイ、左下2個体がタガイ、
左から2番目の中央2個体がマルドブガイ、左から2番目の一番下がトンガリササノハガイ、
それ以外がオグラヌマガイです。他にタテボシガイとタンワンシジミ種群も見られました。

先のRDBには「少し流れがあるか、伏流水がある場所で、水深1~5mの軟泥底に生息する。
成貝は軟泥中に20~30cmも深く潜っていることが多い。」と記されています。
この場所は流れがほぼなく、全体が約27℃の場所と、底層だけ約24℃の場所があり、
約24℃の場所は伏流水があるかもしれませんが、むしろ約27℃の場所に多く見られました。

水深は0.5~1mで多く、1.5m以深では少なかったです。軟泥中に20~30cmというのは、
オグラヌマガイの説明文に、必ず出てくる解説文ですが、主に5~20cmで捕れました。
30cmも掘るとほとんどの二枚貝が殻でした。そして大きく違うと感じたのは軟泥です。
軟泥はシルトではなく、草木が枯れて、粉々になって堆積し、ふわふわしたものです。
それを掘るというよりは、底を撫でて堆積物を、巻き上げる感じで捕れました。
そもそもシルトが20~30cmもあれば、まず酸素が届かないため、棲めないと思われます。

この草木粉による堆積物の場所は、オグラヌマガイが優先的に生息していて、
他の二枚貝はたまに捕れる程度なため、オグラヌマガイくらいしか棲み難い環境なのかも。
逆に言えばオグラヌマガイは、大方の大型二枚貝が好む、礫砂泥には棲むことが出来ず、
草木粉による堆積物でないと、生き残れないのかもしれません。それで減っているのかも。
一見は汚い場所にも、そこを選択的に生息する生物がいるので、多様な環境は必要ですね。
我々ヒトにとっては、選択的に入らない環境です(笑)。かなり無理して潜りましたよっ。

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幼貝です。翼状突起(貝殻の上に羽のように伸びている2つの突起)が確りあります。
これが2つ確りある時点で、オグラヌマガイが確定です。これを見たとき大喜びしました。
この特徴は成貝になると、だんだん削れるのか、消えていくため、同定が難しいです。
一般種のドブガイ種群(タガイ、ヌマガイ)成貝は、殻頂(貝殻の一番上あたり)が滑らかで、
オグラヌマガイ成貝は、うねったようなシワがあります。これが一番の違いのようです。
同所的に両者がいたら、間違うわけが無いほど、違って見えますけどね。

剥き身はトサカギンポたちの餌にしました。カワニナ類も胎殻を確認するため、
茹でて身抜きをしていますが、その身は命の無駄がないよう、魚の餌にしています。
ここのところ、琵琶湖へ行き過ぎて、冷凍庫に1ヶ月分は、身が溜まっています…。

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とりあえず、泥抜き(ウナギは泥抜き不要ですのでしつこいですが)をしました。
水がかなり濁ったので、水換えもして、1日半ほど経って、食べてみることにしました。
小鍋で茹でて口が開いたので取り出しました。外套膜(鰓)を見て食欲がなくなりました。
泥で灰色ぽくなっている。さすがにこれは味の想像が出来たので、綺麗に外しました。
酒1、みりん1、濃い口しょうゆ1、ザラメ1で10分ほど煮詰め、たれごと器に移して、
味が馴染むように、4時間ほど冷蔵庫で保管。そして恐る恐る食べてみることに…。

まずは貝柱からです。口に入れると臭みはなく、特に旨みも無い。硬くて噛み切れなく、
飲み込むタイミングが分かり難い、ホルモンを食べている感じ。酒のつまみに良いかも。
斧足は非常に硬く、筋肉の塊のような感じで、特に味も無くて、何だかよくわからない。
内臓は青臭くて吐気が来た。無理すれば食べられそうだが、硬くていつまで噛んでも、
苦しみが続きそうなため、食べるのを諦めた。結局のところ貝自体に旨みは少なく、
全体が硬くて筋肉質。内臓は気持ち悪くて食べられないので、常人の食用には適さない。

ドブガイ類は琵琶湖周辺の漁港で水揚げし、食用として茹でているようです。
滋賀県東近江市のスーパーマーケットでは、ダブガイとして剥き身が売っていました。
ドブガイ類は食べられるのでしょうが、普通の人は区別しないオグラヌマガイの方は、
食用に適さないので、昔は食べていたとか、そういう話にオグラヌマガイは加えないでね。

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現在1個体を飼育中です。よく動いて落ち着き無いです。居心地が悪いのでしょうね。
この水槽は他に、マルドブガイ、メンカラスガイ、オトコタテボシガイがいます。
巻貝はモリカワニナなど、魚はホンモロコなど、もうほとんど琵琶湖です(笑)。
琵琶湖淀川水系の二枚貝で捕っていないのは、ミズウミマメシジミ、純系イケチョウガイ、
オバエボシ(琵琶湖産)だけです。前2者は諦めているため、オリエボシではない、
オバエボシ待ってろよーっ。今年中に捕る。貝殻のあった辺に潜って捕るぞー!!


追記 2020年02月20日
https://doi.org/10.1016/j.ympev.2020.106755
これまでオグラヌマガイ Oguranodonta ogurae Kuroda and Habe, 1987
は1属1種とされていましたが、
Anodontites lautus tumens Haas, 1910
http://mussel-project.uwsp.edu/fmuotwaolcb/nomsp_4283.html
のシノニムとされ、属も変更になりました。
Sinanodonta tumens (Haas, 1910)

コメント一覧

サレンダー メール - 2013/08/21 (水) 23:18 edit

こんばんは。

結構特異な環境を好む貝なんですね。普通人が潜らない環境に居るという事は乱獲される可能性が低くていいですね。

maiky - 2013/08/22 (木) 23:09 edit

西村さん、こんばんは。
素晴らしい貝ですね。でもホントに良さが伝わらない…。
琵琶湖でこれだけ西村さんが成果出してもどれだけ伝わっていることやら(笑
これだけ琵琶湖てんこ盛りの水槽は後にも先にもないでしょう!

西村 メール - 2013/08/23 (金) 00:57 edit

コメントありがとうございます。

サレンダーさん。乱獲しようにも、何度もやったら、変な病気になると思います(笑)。
私はもう潜ることは無いと思います。乱獲どころか1個体捕るにもハイリスクですね。

maikyさん。記事化が遅くなって申し訳ありません。本当に素晴らしい貝ですね。
ただ、食べてから印象が変わりました。美味しくないと興味が半減するのかも…。
琵琶湖の成果はmaikyさんや皆さんのお陰だと思っていますが、私の伝え方が下手なのと、
成果があっても普通の方は評価する基準が無く、基準を持つ極一部の方にしか、
成果として認識して頂けないんですよね。私はmaikyさんを凄いと認識しています。
琵琶湖てんこ盛り水槽は、大型二枚貝が増えたので、死んだときに水槽崩壊するかも…。

くじら岩 メール - 2013/08/26 (月) 09:53 edit

自分は素人なので、貝の事とかも全く知りませんが、淡水系にも色々な世界があるんですね。時には汚い場所にも潜る根性にも脱帽しました。また、貝を食べてみた感想で、ホルモンを食べている感じ、のところ、伝わってきました(笑)。

西村 メール - 2013/08/26 (月) 22:51 edit

くじら岩さん。コメントありがとうございます。
捕ることが好きなため、汚い場所に潜るのは、捕るために仕方が無いという感じですね。
その採集欲を抑えられず、何でもやってしまうんだと思います(笑)。それにプラスして、
味も気になるため、食べてしまうのでしょうね。かなり危ない人ですね(笑)。
他の方には理解不能なので、成果も理解され難いですが、こうしたコメントを頂ける事は、
非常に励みになります。次はもっと汚い場所に潜るぞぉって(嘘)。