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#2は4店舗目で終了しました。他のスーパーへ行っても同じだろうという思いからです。
今更「はまぐり」とは何かの説明がまだでした。ホンビノスガイ(ホンビノスガイ属)は論外。
ハマグリ属の日本産と、スーパーでよく見かける外国産について、少し触れてみます。

日本産
●ハマグリ Meretrix lusoria (Roeding, 1798)
●チョウセンハマグリ Meretrix lamarckii (Gray, 1853)
●トゥドゥマリハマグリ Meretrix sp.

外国産
●シナハマグリ Meretrix petechialis (Lamarck, 1818)
●タイワンハマグリ Meretrix meretrix (Linnaeus, 1758)
●ミスハマグリ Meretrix lyrata (Sowerby II, 1851)

トゥドゥマリハマグリは西表島にしか分布しないため、流通することはまず考えられません。
ミスハマグリはスーパーで、殻付きの同定できる状態で、見たことはありません。
「干潟生物調査ガイドブック」などによると、ベトナムから冷凍で輸入され、
回転寿司などの外食産業では、シナハマグリに代わって、よく使われているようです。
スーパーなどの陳列棚で、殻付きの生きた状態で、「はまぐり」として売られているのは、
ハマグリ、チョウセンハマグリ、シナハマグリ、タイワンハマグリの4種類だと思われます。

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これら4種類はどう違うの? 見分け方を教えて。。。その質問はとても難しいです。
膨らみが強いとか、丸みを帯びるとか、曖昧な違いが多く、幼貝は異なったりします。
それでも見慣れると識別は容易になります。例えばバスから観光客がたくさん降りてきました。
あっ日本人じゃないな。中国人かな。そう思うことありますよね。その判断基準はどこですか。
目が3つあるとかの違いはなく、これは日本人を見慣れて、識別能力が高くなっているからです。
それを違いが分からないという欧米人に、どのように説明しますか。という事と同じです。

形態的差異はタイワンハマグリを除いて、Fに詳しく記されています。
そこにも「言葉によって明瞭に定義できるような区別点は殆どない」とあります。
私の場合は愛知・三重県産を中心に、ハマグリをたくさん見てきましたので、
その脳内基準から外れる個体は、別の種類だと認識できるようになっただけです。

東海地方産のハマグリは、後背縁が長く直線的で、歪な印象を受け、典型的と言えるのですが、
四国西部~九州北西部産は丸みが強く、シナハマグリに似た形状をしています。
希に東海地方のスーパーで、熊本産ハマグリを見かけますが、脳が違うと認識することも。
スーパーで買った「はまぐり」が何か気になる方は、Gに参加されてはどうでしょうか。
同会が2005年に行った調査の報道がHです。簡単に記すと、ハマグリの表示84品のうち、
ハマグリ4品、チョウセンハマグリ12品、シナハマグリ61品、ミックスその他7品。
11年前と今もタイワンハマグリが加わったくらいで、そんなに変わらないと思います。

「愛知県RDB2002」でハマグリは「県内では絶滅した可能性も高い」と記されています。
その後に見つかり「愛知県RDB2009」では2箇所(そのうち1箇所は私が見つけて報告)です。
それ以降はあちこちで見つかりました。原因は不明ですが、ハマグリ捕りしていた人の話では、
三重県(木曽三川)でハマグリの種苗が放流され、一部が定着して数が回復した頃に、
愛知県の漁港から船で木曽三川へ行き、ハマグリを密漁して戻り、小さな個体を捨てたことで、
それが定着して拡散したのではないかとのことでした。割と信憑性があると思っています。
この種苗がどこ産なのかは気になりますが、伊勢・三河湾産ではない場合は外来生物です。
僅かに残っていた在来集団と交雑している恐れもあります。また、愛知・三重県では、
アサリが優占していた干潟に、取って代わるように、ハマグリが増えています。

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3月3-4日に購入したシナハマグリ、タイワンハマグリ、チョウセンハマグリは、
3月7日まで冷凍庫で保管し、味を比較することにしました。冷凍は身が少し軟らかくなり、
歯応えを重視すると問題もありますが、その分だけ出汁がよく出る方法として知られています。
ハマグリは散々食べているので、買いませんでした。味は確りと覚えています。

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一番味の違いがわかる「茹ではま」にしました。
鍋に水と3種類を入れて茹でて、ある程度の口が開いてから、更に2分ほど茹でました。
同じくらいの大きさのハマグリだとこんな感じになります。写真右上を見て下さい。
泡や灰汁とは異なる、細かくて白いものがあります。これはシナハマグリの身が壊れて、
散乱しているものでした。ハマグリでこうしたことは、ほとんどありません。
茹でた貝を取り出して、軽くしょうゆに付けて食べました。ハマグリも比較に加えました。

■ハマグリ 評価5/5
身割れせず、貝柱を除いて身離れが良く、ぷっくりとして、つるっとした食感。
噛むほどに、旨みが強く感じられ、ハマグリらしい風味が鼻を抜ける。美味しい。

■タイワンハマグリ 評価4/5
身割れせず、つるっとした食感は、ハマグリに近いが旨みが少ない。

■チョウセンハマグリ 評価3/5
身割れせず、肉の様な歯応えがあり、つるっとしたのど越しは無い。
旨みは感じられるが、好みが分かれそうな、独特な味がわずかに感じられた。

■シナハマグリ 評価2/5
身割れしやすく、薄くて硬く、旨みも少ない。貝の口が開いても外套膜(貝紐)が、
両側に付いたままで、綺麗に身が1つにまとまらず、食べ難い個体が多かった。

ハマグリに対する多少の偏見や主観を差し引いても、シナハマグリだけは残念な味でした。
私が採集したハマグリを何度も食べてる2人にも、3種類の味を確かめてもらったところ、
美味しくないというストレートな答えが返ってきました。4種類は味に違いがあると思います。
但し、私が採集するハマグリは、あまり綺麗ではない場所だと、ケミカル臭がすることがあり、
それで全てが台無しになったり、綺麗すぎるところで捕ると、味に深みが無かったりします。
それを踏まえると、タイワンハマグリは養殖なため、味と価格が及第点で安定するため、
スーパーで普段買いする場合は、最も良い「はまぐり」なのかもしれません。

茹で汁を使って、青のりスパを作りました。ハマグリで何度か作ったことがあります。
茹で汁の味を確かめると、通常は冷凍で味が濃くなるはずですが、旨みが少なくて味が薄い。
スパゲティの茹で上がりの直前に、何も付けずに味を確かめましたが、やはり薄かったです。
これでは吸い物にしても、物足りない味になったと思います。焼き蛤だと塩味が際立ちそう。

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ハマグリでおすすめの料理方法は「茹ではま」と「紅生姜煮」です。
その前に砂抜きですが、ハマグリはアサリのような、じゃりっとする大きな砂を持ちません。
砂抜きは不要だとも言えます。しかし、シルト(非常に細かい砂)はあります。
そのため水道水と塩で、塩分1%程度にし、常温で1日くらい置くと、シルト抜きできます。

◆茹ではまの作り方。
1.鍋に水とハマグリを入れ、強火で沸騰させる。
2.口が開いてきたら、ふきこぼれ防止のために、中火にして2分ほど煮る。
3.ハマグリを取り出して、スプーンや箸で身を取り、しょうゆに軽く付けて食べる。

質の良い個体に適します。味を引き出して、簡単で美味しい。旬の6月頃はこれで決まり。
注意すべきは、加熱不足による、ノロウイルス感染です。茹ですぎて硬くなるよりも体が大事。

◆紅生姜煮茹の作り方。
1.鍋に水とハマグリを入れ、強火で沸騰させる。
2.口がある程度開いたら、汁を捨てるか別の料理に取って置くかして、ハマグリだけにする。
3.粗熱が取れたら、スプーンを使って、身だけにする。
4.鍋にハマグリ、紅生姜1(汁も少し加える)、酒1、みりん1、ザラメ2を入れて中火にする。
5.ふきこぼれそうになった段階で、しょうゆ1を加えて、弱火~とろ火で、20~30分煮詰める。
6.小鉢などの器に、ハマグリ、生姜、たれを入れ、ラップをして冷蔵庫で3~24時間寝かす。
7.ハマグリと紅生姜だけ取り出し、小皿などに乗せて食べる。

佃煮や時雨煮だと黒ぽくなりがちですが、紅生姜の赤色に染められて食欲をそそります。
主にザラメと醤油で味を調節でき、自分好みの味に出来ます。ケミカル臭なども飛ぶほど、
臭みを消す効果が強く、あまり質の良くないハマグリでも、美味しく食べられます。
冷蔵庫で寝かす時間ですが、だいたい6~12時間後が食べ頃で、1日半以上経つと、
市販の佃煮と同じように、新鮮な風味がだんだん失われます。寝かさないと味に棘が残ります。

一連の記事は科学的根拠に乏しく、推測の域を出ない事柄を、決め付けている箇所もあります。
そのあたりは、こんな意見もある、という程度の認識で、受け取って下さったら幸いです。
最後になりましたが、maikyさんとK先生にお世話になりました。ありがとうございました。
ハマグリを食べたことがありますか? 本物のハマグリを食べて、美味しさに驚いて下さい!

コメント一覧

maiky - 2016/03/10 (木) 23:37 edit

西村さん、こんばんは。
こちらこそお世話になってます。お陰様で本物のハマグリ食べてます。
スーパー巡りでのハマグリ探しはとても楽しく勉強になりました。
いつも西村さんがハマグリは貴重だと言ってた理由が分かりました。
安易に本物が置いてない、買えないですね。それにしてもタイワンハマグリが多く出回っていたのに驚きました。みんなが本物のハマグリ味わって欲しいですね。いつも見てるハマグリのお陰で楽しいひな祭りツアーでした。来年も行きましょう〜(笑

西村 メール - 2016/03/13 (日) 17:23 edit

maikyさん。コメントありがとうございます。
遅くなって申し訳ありません。こちらこそ勉強になりましたし、記事にする勇気が持てました。
しかし、思ったよりも反響が無くて笑えました。maikyさんのようにハマグリを見慣れていないと、
さっぱりわけのわからない、記事だったのかもしれません。文章も無駄に長くて駄目でしたね…。
映画「スーパーの女」は20年前ですが、今のスーパーも同じなんだなと思いました。
それも分かった上で、消費者はそれが価格に反映されて、安くなって、腹を壊さないのであれば、
という妥協で、黙認というか、どうでも良い日常として、受け入れているのかもしれません。
来年もぜひ行きましょう。次は店員と対決でもしますかね。宜しくお願いします。