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和名モリカワニナ
学名Semisulcospira (Biwamelania) morii Watanabe, 1984
分類カワニナ科 カワニナ属 ヤマトカワニナ亜属 モリカワニナ種
写真
分布琵琶湖北湖(北岸、竹生島周辺)。
環境岩礁〜礫底に多い。波の影響が強い場所を嫌う傾向がある。 竹生島の採集地点Aでは水深0.05〜2.5mに見られ、2.5〜4.0m付近では見られない。 採集地点Bでは水深0〜4m付近では見られず、5m付近でのみ見られた。 文献12によると、 水深10〜12mに最も多く見られるようである。 また、琵琶湖北湖(北岸)の一部では、水深0.5〜5mに多く、それ以深では砂泥質に変わって、見られなくなる。 このように水深による垂直分布は一概に言えない。
食感は軟らかく、僅に臭みと苦味があり、味が薄い。
形態 殻底肋1〜5本、次体層の縦肋数8〜13本。縦肋は4〜7の顆粒が連なり、あまり曲がらず直線的で顕著。 ヤマトカワニナ(肋型)に似るが、 胎殻は細長い、殻高が高い、螺層数が多い、褐色帯は少ないなど異なる。
備考 写真Ub266019〜021タテヒダカワニナ写真Ub266022〜024ヤマトカワニナ(チクブカワニナ型)に似る。 写真Ub266025〜026はその中間とも言える。 本種は両者の交雑起源(雑種)ではなかろうか。 同所的に見られるタテヒダカワニナヤマトカワニナ(チクブカワニナ型)を比べると、 計数形質からも中間的に思われる。胎殻は両種よりもやや大きい印象だが、 タテヒダカワニナには同程度まで保育するものがいる。

文献12には、多景島にも分布するとあるが、 我々は島をほぼ1周して探したが見つからず、S先生らの水深10m近くまでの調査でも見つかっていない。 また、文献9の付録4にある琵琶湖のカワニナの分布表では、 水深1〜13mの調査にも関わらず記録されていない。 多景島の分布情報は誤りか、絶滅したことが考えられる。 現状では多景島周辺に本種は確認できない。

本種は従来から竹生島・多景島周辺のみ分布するとされるが、我々は北岸周辺での分布を確認した。 産地ではタテヒダカワニナ系(タテヒダカワニナオオウラカワニナホソマキカワニナ)と ヤマトカワニナ3型(結節型肋型チクブカワニナ型)の2種類が、同所的に高密度で見られる。 本種は交雑によって誕生し、分布を広げたと考えるよりは、それぞれの水域で交雑発生したと想像する。 その説が正しいとすれば、タテヒダカワニナ系が見られない多景島は、本種が分布することは考え難い。

写真Ub112007〜008は縦肋が弱く、体層はほぼ平滑に近い。 竹生島周辺産のように特徴が顕著ではないため、こうした個体は見落とされて来たのであろう。 タテヒダカワニナ系とヤマトカワニナ3型が、 同所的に生息するところには、本種と見なせる個体が、新たに見つかる可能性が高い。

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