病気の予防(3)





基本的な治療方法

●加温
  
  ヒーターで加温するだけで病気が治まることがあるんです。  
  
私は魚が病気になった時はまず水換え後にヒーターによる加温を行います。 魚に粒がついていたら普通は白点病と診断しますが、 粒も様々で白点病だけでも数種類の病原体があるようです。 白点病に効くという薬が全ての粒に効くとは限りません。 誤診した場合に白点病の薬は無意味となり早期の治療時期を逃すことになります。 病気の多くは薬よりも水換えをしてから、ヒーターで加温を数日間するだけで静菌効果により回復します。 夏に病気が起こり難いのは多くの病原体にとって水温が高すぎるためです。 冷水魚は高水温に弱いため加温できませんが、コイ目の魚であればほとんどは耐えられます。 私は31℃にすることが多いですが、魚の種類や状態によっては高すぎるため、 28〜30℃を目安にすると良いと思います。ヒーターで31℃設定にしても誤差が出ることがあり、 水温計で高くなりすぎないよう必ずチェックしてください。 32℃を超えると数時間で死ぬ魚も出てきます。 シュードモナス病、エロモナス病(穴あき病)、水カビ病、 ウーディニウム病(コショウ病)、白点病などが加温による効果が期待できます。 それでも治らない病気もしくは急ぐ必要がある場合は加温と塩水浴が効果的です。 外傷は自然治癒を待つか感染予防にアクリノールなどが適していますが、 病原体による症状は薬よりも加温と塩水浴の方が良いと思います。

●塩水浴の塩
 
  
  食塩以外の塩であればどれでもいいと思いますよ。  
  
塩水浴に使う適当な塩について考えてみます。 塩は殺菌効果だけではなくミネラル(イオン)補給の効果もあり、 塩化ナトリウム99%以上の食塩(精製塩)の使用はあまりおすすめできません。 汽水域には多くの純淡水魚が見られますが、これは天然海水に棲めるという証明ですしミネラルも豊富です。 天然海水を水道水で塩分1%ほどに薄めた水槽に、水カビ病になったデメモロコ濃尾型を入れたところ、 数日で治り1ヶ月程度はそのまま飼育していました。 人工海水は天然海水に近い成分と言われていますが天然海水にある全ての元素を含まないそうです。 粗塩(自然塩)は天然海水を天日干しただけの塩ではなく、 専売塩ににがり(ミネラル)を多く残したり添加し、水分を多めに残した加工塩とも言えます。 岩塩はミネラルがほとんどないため添加されていることが多いようです。 結論として食塩以外は問題ないように思いますが、 無難と便利さでは粗塩が適当でしょう。

●塩水浴の粗塩量
60cm水槽 (例)
高さ :
横幅 :
奥行 :
33cm
58.5cm
28cm
砂や飾り :
濾過槽の水 :
3000ml
1000ml
粗塩 :
塩分90%
この水槽を塩水浴(塩分0.5%)するために必要な粗塩量は?
簡易計算式↓         ↓推奨計算式
 
  高さcm×横幅cm×奥行cm=水量
水量÷100×塩分0.5=粗塩量g
 
 
34×58.5×28=55692
55692÷100×0.5=278.46
粗塩量:278g

 
 
  高さcm×横幅cm×奥行cm=A
A−砂や飾りml+濾過槽の水ml=水量
水量÷100×塩分0.5=B
(水量+B)÷100×塩分0.5=D
(2−粗塩÷100)×D=粗塩量g
 
 
34×58.5×28=55692
55692−3000+1000=53692
53692÷100×0.5=268.46
(53692+268.46)÷100×0.5=269.8023
(2−90÷100)×269.8023=296.78253
粗塩量:297g
  
  粗塩をちょっとだけ入れたくらいでは病気は進行しますよ。  
  
塩分0.5%は上図のように粗塩量を求めます。 普通の60cm水槽は横幅60cm×奥行29.5cm×高さ36cmの水量57Lですが、そのまま計算すると水量63.72Lになります。 これは水槽の外側を計算したためで、幅を測るときは内側を測る必要があります。 濾過槽の水と砂や飾りの量は大体で構いません。 粗塩の塩分とは成分表(100g)で塩分・塩分濃度・食塩相当量や塩化ナトリウムに1〜5gほど加えたものがそれに当ります。 粗塩100gは実際には90〜95gが塩類のことが多く、中には水分10.3gや塩分73.34gとある粗塩もあります。 正確な塩分を知るには導電率計や比重計を使いますが、 数十グラムの誤差は無視して構いませんし慣れれば目分量でも良いでしょう。 塩分0.5%は多量の粗塩を使うため驚くかもしれませんが、淡水魚の生理食塩水(体液)は塩分0.6%とされています。 私はたいてい塩分0.5〜1%にしますが、無難は塩分0.3〜0.7%だと思います。

●加温と塩水浴
 
  
  水換え、ヒーター28〜30℃、塩分0.3〜0.7%、1週間ほど様子を見る。  
  
病気が発生した飼育水槽を水換え後にヒーターで28〜30℃まで加温し、 塩分0.3〜0.7%で魚が痩せていない限りは3日は絶食させます。それでも良い兆しが見られないときは、 加温と塩水浴では効果がない病気(栄養素欠乏症・栄養素過剰症・外傷・内臓障害・ヘルペスなど)か、 水換えした水に毒物(合成洗剤や殺虫剤など)が混入している可能性もあります。 写真は穴あき病に似た症状が見られたため加温と塩水浴によって治療したものです。 こうした際は直ちに穴あき病と決め付けるのではなく、治療中も他の病気を疑う必要があります。 ビワヨシノボリの水槽を新規に立ち上げた際、 ヒーターを入れないまま飼っていたところすぐに白点病になり、 他のヒーターが入っている水槽は全く白点病に掛からなかったことがありました。 その際は水換え後にヒーターで31℃の塩分約1%で10日ほどして完治しました。

●隔離治療水槽
  
  
  トリートメントタンクを常備するよりメイン水槽の見直しを。  
  
病魚だけを別の水槽で隔離治療するよりは、病気が発生した水槽を水換えして加温と塩水浴する方が望ましいです。 それは他の魚も病気の初期段階で目に見えないだけかもしれず、放置して病状を悪化させることもあるからです。 しかし水草や貝類が心配な場合は隔離治療する方法もあります。 それも様々で塩分3%にした水槽に1分ほど入れる方法は、症状が悪化した個体は数十秒で死ぬため荒療治です。 おすすめは小さな水槽に水道水、カルキ抜き、水中フィルター、水温計、ヒーターを入れて水温28〜30℃にし、 病魚の水槽からビニール袋に水を汲んでそこに病魚を入れます。 それを隔離治療水槽の中に引っ掛け、15分ほどしてから水ごと入れます。 そして塩分0.3〜0.7%になるよう粗塩量を計算します。 粗塩は少しずつ溶かした方が魚への負担は軽くなりますが私は一気に入れています。 エロモナス病は更にエルバージュ(口径投与も可)などを追加しても構いませんが、 非常に強い薬のため死ぬこともあるという一か八かの覚悟が必要です。 魚が痩せていない限りは3日は絶食させます。 その後は魚の状態を見ながら完治したらメイン水槽に戻します。 ドジョウが穴あき病で何尾も死んだことがありました。 体に穴が開いて肉が見え、いつ死んでもおかしくない状態のドジョウを、 小さなプラケース、水道水(カルキ抜きなし)、エルバージュ(規定量よりもやや多め)、 粗塩(1%程度)に入れて5日間ほど絶食させました。 述べるまでもなく荒療治ですが穴の痕跡は残りましたが完治しました。


雑知識

粗塩 観賞魚用治療薬
どちらも完治して元気になる保証はない
人体に無害 人体に有害なものがある
使用時に人体保護装備は不要 使用時に人体保護装備が必要なことがある
保管は特に気をつけなくても良い 保管は遮光して小児の手の届かないところが普通
着色はないがコンセントなどに塩がこびり付くと危険 水槽内や衣服などに着色して取れなくなることがある
投与量にある程度の誤差は問題ない 投与量を0.1g単位で要求されることもある
効能・効果は殺菌と免疫力向上と体調改善 効能・効果は殺菌が中心
光・濾過・自然分解で効果が薄れることはない 光・濾過・自然分解で効果が薄れることがある
安価(150〜300円) 高価(500〜3000円)
コンビニでも買える 免許のある観賞魚店でしか買えない薬もある
水草は枯れることがある 水草を枯らさないと謳う薬も塩を含むことがある
●粗塩vs.観賞魚用治療薬
  
  比較すると私は粗塩を選択します。もちろん水換えと加温もしますよ。  
  
観賞魚用治療薬はマカライトグリーンなど人体に有害な薬もあり、 取扱説明書にはマスク・メガネ・手袋などの使用や、 誤飲は医師の診察を受けることなど、手軽に使える物とは思えない内容が羅列されています。 注意事項は「動物用医薬品データベース」で検索できます。 1回の使用量が60cm水槽で約600円もかかるオキソリン酸系の薬は安いものではありません。 薬以外に水道水も塩素類による殺菌効果があり、感染性の病気が蔓延して手遅れに近い場合、 水槽の水を1割ほどに減らしてゆっくり水道水(カルキ抜きなし)を入れて満杯すると、 1日くらいで死ぬ魚と生き残る魚がはっきり分かれて感染拡大を防ぐこともできます。 私はいつも水換えのときはカルキ抜きを規定量より少なめにし、 病気のときの水換えはカルキ抜きを入れないことも多いです。

●観賞魚の雑誌や書籍
  
  雑誌って広告ばかり。私が企業ならうちの商品を推奨して欲しいなぁ。  
  
観賞魚の雑誌や書籍などの紙媒体は、例えばドジョウの飼い方としてA砂が適し、餌はBフードを好んで食べ、 病気はC薬で対処しましょうという具合に商品名がよく出てきます。 初心者やその商品を使ったことがない方は購入するかもしれませんが、 紙媒体はスポンサー企業があってこそ成り立っています。 商品を写真入りでことさら勧めている場合は、その企業がスポンサーの可能性を疑ってしまいます。 昔から病気に塩水浴が効果的なのはよく知られていますが、 特定の薬だけを勧めて塩水浴には全く触れていない紙媒体もあります。 端的に言えば塩企業がスポンサーではないからでしょう。 これらは紙媒体とスポンサーどちらも営利目的のため当然です。 当初は紙媒体を鵜呑みにして薬を多用してきましたが、色々と試して辿り着いたのは薬ではなく加温と塩水浴でした。 有名な観賞魚用治療薬のグリー○F、グリー○Fリキッド、ニューグ○ーンF、リフィッ○ュ、 トロピカルゴー○ド、トロピ○ル-N、ハイ−トロピ○ルなどの主成分は、塩化ナトリウムすなわち塩で治す薬なのです。

●汽水域は病院にもなる
 
  
  淡水魚も海水魚も病気になったら汽水域を目指すのかも。  
  
「海と陸との狭間で」によると河川でトウゴロウイワシを捕ると非常に高い確率で寄生虫が付着しているそうです。 私も何度か河口(汽水域)でトウゴロウイワシを捕りましたが淡水域では1度も見られませんでした。 本来は海水魚と考えられ淡水には耐えられないのかもしれません。 それではなぜ海から河口に来るのか。 海産の寄生虫を落とすために淡水浴もしくは汽水浴に来ているのではないでしょうか。 淡水魚には塩水浴を海水魚には淡水浴をさせますし、寄生虫は塩分が低いほど耐えられなくなって落ちます。 それと同じように純淡水魚が河口で見られる理由として、一部は治療のため汽水浴に来ている可能性も考えられます。 河口でモツゴを捕ると病気の割合が高い印象があります。 こうした河川を舞台にした魚たちの往来は、河口堰が出来るなどして阻害されると、自然が持つ治癒機能も失われます。


まとめ

 

●淡水魚飼育3つの基本
  
  行き着くところは愛育?それとも理屈?  
  
病気の予防は追求したら切がありませんが、上述した他に重要なのは夏の高水温対策で、 これは「水槽の冷却方法」で触れています。 過密飼育も良くないと指摘される方がおられますが、60cm水槽にタナゴ類を3尾しか 飼育できない環境もあれば30尾を飼育できる環境も作り出せます。 それは水槽の物質循環バランスという物差しで計らないといけません。 高価なフィルターを設置して栄養価の高い餌を与えれば、 病気が予防できて良い水槽環境が保てるわけではなく、それは基本を実行してからの話です。 その基本とは「まず水換え」「ヒーターは必要」「単食させない」の3つです。 これらに気をつけるだけで随分と病気を予防でき、 今までと違った淡水魚飼育が可能になると思います。