ホンモロコ or タモロコ





ホンモロコ 口髭が短く吻が尖る
タモロコ 口髭が長く吻は丸い

ホンモロコは琵琶湖固有種でタモロコは西日本を中心とする各地に分布するとされています。 現在では放流により両者とも各地で生息情報があります。 両者の決定的な相違点は第1鰓弓の鰓耙数が、ホンモロコは14〜20、タモロコは6〜12とされています。 地域や環境要因で形態形質の変異が大きいことが知られ、琵琶湖では時々雑種ができることもあるようです。

口髭と瞳孔径
ホンモロコ(琵琶湖産)口髭は短い。タモロコ(濃尾平野産)口髭は長い。

ホンモロコの口髭は瞳孔径より短く、喉部が角張り、側線下方の暗色線が1本、 タモロコは口髭は瞳孔径より長く、喉部が丸く、側線下方の暗色線が1〜3本とされています。 ここでは口髭と瞳孔径の関係と吻について決定的な特徴として同定に利用しました。 口髭は希に欠損している場合があるので注意が必要です。

口髭の長いホンモロコ
口髭と瞳孔径はほぼ同じ(口髭の方が僅かに長い)で、喉部が角張り吻が尖り側線下方の暗色線はない。(琵琶湖産)

細身なタモロコ
口髭は瞳孔径よりやや長く、喉部や吻が丸く側線下方の暗色線が1本。(愛知県産)

同定の際にホンモロコは細身でタモロコは太短いという特徴がよく重視される印象を持ちます。 細身のタモロコの写真をよく見ると、口髭の長いホンモロコよりも体幅があり全体的に丸みがあります。 しかし変異の多い種類だけにこれだけで判断するのは無理があります。 口髭と瞳孔径だけでなく複数の特徴を総合して判断しないと同定は出来ないと思われ、 特徴の良く出た典型的な個体以外の同定は容易ではありません。 琵琶湖にはホンモロコとタモロコが生息していますが、 写真の口髭の長いホンモロコのように一見では判断し難い個体もいます。 典型的なホンモロコと同じ生活を送ったタモロコと、 典型的なタモロコと同じ生活を送ったホンモロコがいたとすれば、 それらが形態形質的に判別が可能なのか疑問が残ります。 またスワモロコ(絶滅)の尾柄高は頭長の45%以下で、タモロコは47%以上とされていますが、 遺伝的なアプローチがないため研究の進展が待たれます。

鰓耙数
ホンモロコとタモロコの鰓耙数を正確に数えるのは骨が折れます。(琵琶湖産)

口髭と瞳口径などから典型的なホンモロコの第1鰓弓を取り出し、 鰓耙数を調べたところ17か18本でした。 タモロコとホンモロコの鰓耙は非常に短く、正確に数えるのは大変難しいです。 また両者の差が僅か2本ということから、数え間違いが許されません。 数えるには殺さないといけないため、決定的な形態形質でありながら、 実用性は低いのではないかと思われます。

交雑個体か
タモロコとホンモロコの中間的な個体が捕れる地域がある。(濃尾平野産)

濃尾平野の一部ではホンモロコの形態形質を強く現すものから、 タモロコらしいものやその中間型まで、様々なタイプの個体が採集できます。 例えばうなたろうさんが計測した「写真掲示板 2007年12月」の個体は、 瞳孔径(2.4mm)口髭(1.4mm)と口髭の方が短く、鰓耙数(16か17)のためホンモロコとなります。 その一方でタモロコのように口髭の方が長く、鰓耙数はホンモロコに該当する個体も見られます。 おそらくホンモロコの放流によって濃尾平野産タモロコと交雑し、 様々な形態形質の個体が出現しているものと思われます。 ホンモロコと琵琶湖産タモロコは生殖隔離され、希にしか交雑せず別種として扱われていますが、 ホンモロコと濃尾平野産タモロコは交雑があると仮定すると、 ホンモロコは全国に放流されているため、その地域のタモロコがホンモロコと交雑し、 ニッポンバラタナゴ×タイリクバラタナゴのような交雑個体群になっている恐れが考えられます。 止水域で見られるホンモロコに似たタモロコの中には、 ホンモロコと交雑している個体が含まれる可能性があり、 より慎重に精度の高い同定が求められます。


参考・引用文献 ※不備がある場合は改めますのでお手数ですがご連絡ください。
□ 日本産魚類検索 全種の同定 第二版 中坊徹次編 東海大学出版会 2000.12.20
□ 湖国びわ湖の魚たち 増補改訂版 滋賀県立琵琶湖文化館 1991.3.31