カマツカ種群





腹鰭先端と臀鰭起部の位置関係で同定する

日本産カマツカ属は1種が定説でしたが、 1969年に「日本のコイ科魚類」で、体がやや細長く口が小さい琵琶湖産(グループ1と思われる)と、体が太短く口が大きい兵庫県産(グループ2と思われる)は、今後の検討が必要と記されています。 そして2008年8月に遺伝的な差異のある3種類(Group 1-3)が報告され、同年10月に形態的な差異は、見つかっていないと発表がありました。 私は馴染み深いグループ1と比較するため、初めてグループ2を捕り、形態的な差異を見つけ、 写真掲示板投稿しました。 翌年にはグループ3も捕って比較しました。それらをまとめて簡単に紹介します。当ページは私見が主です。今後の研究進展に期待します。

日本産カマツカ属2種2亜種(3種類)
コイ科 Cyprinidae
└カマツカ亜科 Gobioninae
   カマツカ属 Pseudogobio
       カマツカ/カマツカ(グループ1) Pseudogobio esocinus (Temminck and Schlegel, 1846)
       標準和名なし/チュウゴクカマツカ(種) Pseudogobio vaillanti (Sauvage, 1878)
           標準和名なし/カマツカ(グループ2) Pseudogobio vaillanti subsp. 1
           標準和名なし/カマツカ(グループ3) Pseudogobio vaillanti subsp. 2
科名 亜科名 属名 種小名 亜種小名 命名者名 命名年
「カマツカ種群」とはカマツカ(グループ1)カマツカ(グループ2)カマツカ(グループ3)の総称です。 「カマツカ」は記載論文からグループ1だろうと思われます。 グループ2とグループ3はアジア大陸に分布するチュウゴクカマツカ(仮称)に近縁で、亜種関係の可能性が高いと判断しています。 すなわち、グループ1だけがカマツカで、グループ2とグループ3は名無しです。 3種類の分布はこちらに掲載されていますが、移植水域は更に多いようです。 グループ3のみの分布域に、グループ1が移植されると、雑種化することもあるようです。飼い切れなくなっても放流は止めましょう。

基本は引っくり返して同定します
全長8cm以上は腹鰭先端と臀鰭起部の位置関係が使えます。グループ1とグループ2は庄内川水系の同所で捕れました。

カマツカ種群を引っくり返して、対の腹鰭を体側へ乗せます。 その先端の体幅を計り(写真の場合は線を引く)、その中央から同じ長さを臀鰭起部へ向けます。 それが臀鰭起部にグループ1は達しない、グループ2は達する、グループ3は達する個体が多いです。 これはグループ1と比べて、グループ2は腹鰭と臀鰭が後方にあり、体幅が広いという2つの特徴から、導き出した識別方法です。 グループ3はグループ2に近いものの、微妙な個体も多い印象です。 口の大きさはグループ1、グループ3、グループ2の順です。 形態的な違いはグループ1とグループ2では明瞭ですが、グループ2とグループ3は傾向的な特徴はあるものの、まだ明確には見つかっていません。

上と横からの同定は難しい
カマツカ種群は横から撮影しても同定できないことが多く、特に腹鰭先端と臀鰭起部の位置関係が見えないと難しい。

上や横からの同定は難しく、前述の引っくり返した場所を、想像して同定します。 上から見るとグループ1は吻が尖り、グループ2は吻が丸く、グループ3は吻がやや丸く見えます。 横から見ると腹鰭先端から臀鰭起部までの距離は、長いグループ1、短いグループ2、やや短いグループ3です。 また、口にある口髭長や口唇の小突起などが、口の大きさと相対的に異なり、グループ1、グループ3、グループ2の順に大きく見えます。

幼魚(全長8cm未満)の同定は更に難しい
グループ1とグループ2が混生する場所では、バケツに入れて上から見るだけでも、違いが明瞭に判ることが多いです。

腹鰭先端と臀鰭起部の位置関係は、幼魚は正判別率が下がる傾向にあります。 吻の形状は幼魚でも同じと思われ、曖昧で微妙な差ですが、そこに重きを置き、生息環境なども鑑み総合的に同定します。 生息環境はグループ1は流れが弱い中下流域に多いです。下流域や湖沼でグループ2やグループ3が見られることは希です。 グループ2とグループ3は流れが強い上中流域に多いです。混生域は流れが弱い場所にグループ1、 流れが強い場所にグループ2と、棲み分けする傾向があります。


参考・引用文献 ※不備がある場合は改めますのでお手数ですがご連絡ください。
□ 日本のコイ科魚類 中村守純 資源科学研究所 1969
□ Tominaga K., Watanabe K., Kakioka R., Mori S. and Jeon S-R. (2008) Two highly divergent mitochondrial DNA lineages within Pseudogobio esocinus populations in central Honshu, Japan. Ichthyological Research (DOI 10.1007/s10228-008-0071-0)
□ 第47回魚類自然史研究会要旨集 2008.10.18
□ 2010年度日本魚類学会講演要旨 日本魚類学会 2010.09.24
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関西学院高等部理科部
日本動物誌 Fauna Japonica
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