同定できる写真撮影(1)





はじめに

私が魚を撮影するのは同定(種類を特定)できる写真を残すためです。 魚を標本にすれば良いですが、体色は変化してしまいます。ここでは魚の同定に役立つ撮り方を紹介します。 私が撮影した魚の写真を、時々綺麗と言って下さる方がいます。 たいてい「どんなデジカメをお使いですか?」という話になります。 当サイトにあるほとんどの写真は、 2000年発売で324万画素の2号機です。 2001〜2009年まで壊れかけたまま使っていました。現在では一部の携帯電話の写真機能よりも劣っています。そのデシカメも完全に壊れて、 今(2009年以降)は3号機4号機を使っています。 魚を撮影する上でデジカメは大差がないと感じています。 綺麗な写真が撮れないのは、決してデジカメのせいではなく、撮影方法の問題だと思います。

●デジカメの設定
私は「ノーマルのマクロモード」で撮影しています。 魚がよく動く場合は連続撮影モードしたり、電球下では電球モードにすることはありますが、 他の設定はほとんど変更しません。基本は半押しでピントを合わせ、撮影するだけの単純な操作をしています。 特に小魚(全長15cm以下)は、デジカメの性能に頼って撮るのではなく、 「綺麗に撮影できる状態」にすることが大事です。 それには強い光やアクリルケース(N-1600F)を使うことです。


同定できる写真に必要なもの

川で魚捕りして小魚を撮影しようすると、バケツの上から撮るか、手に乗せて撮るくらいになります。 たいてい鰭がたたんで、口髭の有無も確認できなくなります。同定の際に必要な部分が全く見れません。 また、魚体に付いた水が反射して白化したり、景色が写り込むこともあります。 更に手に乗せた魚が飛んで、地面に落ちて怪我をし、最悪は死にます。 そのため小さなプラスチックケースなどに入れて撮りますが、 一般的なホームセンターや観賞魚店で売られているプラスチックケースは、 透明度がやや低い、強度が弱くて割れやすい、細かい傷が付きやすいなど、撮影用水槽としては不向きです。 そこで透明度が高くて強度があり、傷が付き難いアクリルケースを使う必要があるのです。 以下はアクリルケースで撮ることを前提に記述を進めます。 近年まで無印良品に比較的安価で使えるアクリルケースが売られており、 それを購入すれば良かったのですが、現在では販売されていません。 また、本来は収納ケースのため、細かい点で使い勝手の悪いところもありました。 そこで魚を撮影することだけを目的とした、オリジナルのアクリルケースを作りました(次頁参照)。

●そのままとアクリルケース

写真は2枚とも同じ個体です。上はタオルにそのまま乗せた写真で、下はアクリルケース(N-1600FB)で撮った写真です。 識別点の量が全く違ってきます。同定できる写真とは、見た目が綺麗かどうかではなく、 1枚の写真にどれだけ多くの識別点を見せることが出来るかです。 人は顔を見て識別しようとするため、魚も顔つきだけで同定できると思われることがあります。 それは間違いです。魚の多くは頭から尾鰭まで、1つ1つ特徴を見ないと同定はできません。 そのためにも識別点を意識して撮る必要があります。

●水道水

川で汲んだ水をアクリルケースに入れると、ゴミが浮いて濁っていることも多く、ピンボケした画像になりやすいです。 そのためペットボトルなどに水道水を詰めて持って行くと、クリアな水でピントも合いやすくなります。 ただし、汽水域で採集した魚に水道水は使えません。 アクリルケース(N-1600F)であれば手で魚だけを容易に取り出せるため、水道水を複数の魚の撮影で使うことが出来ます。 従来型のアクリルケースは手が入らず、魚と水を一緒に取り出す必要があるため不便です(次頁参照)。


光の重要性

 
飼育用水槽では魚が泳ぎ回るため、尾鰭が曲がったり、斜めに写ったりします。 また、水槽用蛍光灯だけでは、光が弱くてピントが合いません。 水槽の魚を綺麗に撮ることは非常に難しいです。 写真は「第32回魚類自然史研究会」で内山りゅうさんが、 実演講座で撮影法を紹介して下さった際の様子です。 水槽の上には水槽用蛍光灯とスレーブフラッシュ4つ、斜め上からフラッシュが光ります。 撮影には上方向からの強い光が大切なのです。 しかも、底砂は白色で水槽奥ほど高くなり、背景に石を置いて狭くなっているため、 魚が手前に集まりやすく、マクロ撮影で狭くなる被写界深度に対応しています。

●屋外での撮影(明)

強い太陽光があれば、明るくピントの合った写真が撮れます。太陽光が強すぎる場合は、アクリルケースを回して良い位置を探します。 非常に良い撮影環境ですがタイミングが少なく、朝焼けや夕焼け時の撮影は、写真が橙色ぽくなってしまいます。

●屋外での撮影(暗)

いつも都合よく強い太陽光はないため、そういう時はLED懐中電灯をアクリルケースの上に乗せると、暗い中よりかは綺麗に撮れます。 それでも光が弱いため、ピンボケになりやすいです。 どうしてもピントが合わなかった場合は、フラッシュ撮影も良いですが、魚本来の色は失われます。

●屋内での撮影

スレーブフラッシュなどがなく、屋内で撮影する場合は、強い光を出すライトの下で撮ります。 水槽用蛍光灯をアクリルケースに乗せたくらいではピントが合わないため、強力な光を出すACライト(300W)が良いです。 これで上から常にフラッシュを当てているような状態になります。 ピントは合いやすいですが、電球色を抑えられる(電球モードなど)デジカメでないと、 魚も電球色ぽくなります。また、火傷するほどの熱を放つため、気泡が出て水がだんだん温まり、 長く使っているとアクリルケースが溶けます。